第4章 怖い人
自分の名前を言い終えると、後ろにいたクルーが次々に自分の名前を投げた。
あまりに多くの視線がこちらに向けられているので思わず身を引きそうになる。
一通り全員が名前を言ったところで「penguin」の文字を被った彼が「全員の名前はゆっくり覚えていけばいいよ」と言ってくれた。
何十人もの名前を一気に覚えられるほど器用な頭を持っていないので、その言葉だけで随分と楽になった。
彼らの陽気さに忘れてしまいそうになるが、ここは海賊船なのだ。変なことを口走ったり機嫌を損ねたりしたら殺されかねない。
そのためにも早く名前を覚えなければいけない。
海軍に捕まってあれこれされるよりは、死んでしまった方が幾分マシかもしれないという考えも私の中にはあるのだが。
それから船の案内をしてもらった。
甲板に物がなく不思議な形の船だと思ったら、潜水艦だったようだ。
潜水する海賊船だなんて初めて見るので、物珍しさで失礼なくらいまじまじと船内を見てしまったかもしれない。
さっき入った医療室にある多くの刀を見て“襲撃に備えて全ての部屋に置いているのだろうか”と考えたが、それは違うらしい。
大量の刀があるのは医療室と武器が置いてある倉庫だけのようだ。
船内探検の最後の部屋は食堂だった。
大きめの扉を開けると既に食事が用意されていて、部屋中に食欲をそそる匂いが広がっていた。
大きなテーブルには全員分と思われる食事が並んでいた。
やはり一人一人に用意する訳ではなく、米と汁物は自分でよそい、おかずはいくつかの大皿に分けて盛ってある。
それぞれが箸を伸ばして食べるようだ。
コックと思われる服装のクルーはいなくて 壁に大きく“当番表”という張り紙がしてあるので、交代制で毎日ご飯を作っているのだろう。
並んでいるおかずはなんともスタミナが付きそうなものばかりだ。
「ささ、座って!」と案内され、頭だけでお礼をして、既にご飯とスープがよそわれた席の椅子に座った。