第4章 怖い人
「ベポ、次の島まで何日かかる」
ベポと呼ばれるシロクマの方に顔だけを向け、切るような鋭い視線を向ける。ベポはその表情を気にしていない様子だ。
「う〜ん正確な日数は分からないけど、だいたい15日くらいだと思うよ」
「そんなにかかるのか?」
「通り道に危険な海流があるんだ。遠回りするのが普通の航路らしくて…」
二人の間だけで会話が進められる。
さっきまで頭を下げていた二人も何か話しているが、私はビクビクしてしまって何も考えられず、耳に入ってくるだけで理解できない。
私は視線を下に落としたままただただ時間が過ぎるのを待っている。
ベポとの会話が終わったようで、キャプテンはこちらに顔を向け、私を上から稲妻の如く視線で貫く。
下を向いているので表情は確認出来ないが、絶対に私を睨んでいる。ような気がする……。
「この女がいなければお前らは今でも軍艦だと言ったな…」
ドスの効いた声だ。それまで私語をしていた二人の会話はピタリと止まり、「はい!!!」と肩を弾かせながらキャプテンに向き直る。
「誰かに頼らねえと部屋一つ抜け出せねえようなポンコツだったか…?」
二人は背筋をピンと伸ばしながらダラダラと汗を流している。否定の言葉も並べられないくらいに焦っているようで、いや…とかあの…とか文にならない言葉を並べている。
身長はさして変わらないというのに、三人はライオンと小鳥くらいの迫力の差がある。
その様子を私もビクビクしながら見ている。
するとキャプテンは何も言わず船内に向かって歩き始めて、ガチャリという音を立てて扉を閉めてしまった。
姿が見えなくなって緊張が若干解けた気がした。
「乗ってもいいってことかな?」
「そうだろ!」
二人が顔を見合わせさっきの表情とは一変、笑顔を浮かべている。
私の肩と背中をそれぞれがバンバンと叩きながら上機嫌に笑い声を立てた。この状況に既視感を覚え、つられてクスクスと笑った。
「やったなあ!おれペンギンっていうんだ!よろしくな!」
見上げて彼の顔を見ると、頭に乗せられた帽子には確かに「penguin」と書かれていた。
そういえば自己紹介がまだだったことを思い出した。
「おれ、シャチ!!よろしく!」
続いてもう一人のお世話になった彼の名前を教えてもらった。
「レイです。よろしくお願いします」