第3章 助け舟
「とりあえず船が出ちまう前にここを出るか。」
「そうだな」
軽い感じで会話をする二人は、体の傷をあまり気にしていないらしい。
この部屋を出ればきっと海軍がたくさんいるのに。
「あ、でも私は…」
「ん?出るよな?」
否定を言葉を並べようとして遮られてしまった。その言葉に嫌味や嘲笑の意はなく、純粋に聞いたようだ。
「出ても行くところがありません。」
目を逸らして手を握りしめ、“帰るところがないこと” と “きっとまたここに戻されてしまうということ” を伝えると、「そんなこと後で考えればいいよ!海軍に手錠かけられて幸せになることなんてねえんだから」と、もっともなことを言われてしまった。
「っていうか靴履いてないじゃん!さっきの窓素足で割ったのかよ!」
うわ!と言わんばかりに一歩引いて足を凝視する。
その足からはさっきのガラスが足に刺さって血が出ている。彼らの怪我程ではないが、じんじんしていて早く座りたい。
「いえ、大丈夫です。お二人の怪我の方が……わっ!」
困ったような笑みで言いかけたがまた遮られてしまった。今度は乱暴に肩に担がれて。
ここを三人で出るつもりらしい。
「目を瞑ってろよ」という声と同時にもう一人の人が重い扉を蹴破り、一斉に走り出した。
案の定外は見張りだらけのようで、四方八方から 「待て!」と振り立てる声が聞こえる。
私は顔を背中に押し当て ぎゅっと目を瞑った。彼が走る度にお腹が肩に押さえつけられて何かが込み上げてくるようだ。
聞こえてくる怒声と銃声が恐怖を煽り、とても目を空けられそうにない。
だが走っている二人はやはり余裕そうだ。
「うわ〜!すっげー数の海軍だな!」
「そんな走り方してっと転ぶぞ」
二人共感心したように後ろを振り向きながら言い漏らす。
逃げ回るうち、だんだんと聞こえてくる声の数が少なくなってきたようだ。
「っだーー疲れた!!」
ようやく鬼ごっこが終わった。