第2章 黒になる
視線をシロクマから外し船の進行方向を見ると、よく知った船が前を走っていた。
帆にMを図案化したカモメのマークを掲げていた。
船には警備の者が数名直立不動で時折周囲をキョロキョロしながら見張りをしている。
確実に海賊旗を掲げたこちらの船が視界に入っているはずなのに、攻撃してくる様子はない。
それにしても見張りが多い。たいして大きな軍艦ではなく、極悪人が乗っているような雰囲気でもないのに大砲や火薬をたくさん置いている。
いつの間にか背後にいたクルーも不審に思っているようだ。
「なんなんスかね、あの軍艦。俺たちをスルーしやがる。」
「ウチも船長のおかげで名のある海賊になったからあんなちいせえ船じゃ捕まえられねえと分かってんじゃねえか?」
釈然としない顔をしているペンギンの隣で無邪気に光が当たっているのを喜ぶシャチ。
襲ってこないならこちらから仕掛けることはない。あっちに戦意がないなら放っておけばいい。
軍艦のさらに向こうの水平線には緑が浮いているのを確認した。
「お前ら、上陸の準備をしておけ。今日の夕方には着きそうだ。
…………!! ぐぁっ…」
持っていた刀が腕から離れ甲板に打ち付けられた音が響く。
「キャプテン!?」
突然苦しみだし膝をついた我が船長にまわりであたふたするクルー。
対して腕をデッキの手すりに委ね、膝頭を地につけて下を向いている船長。
苦しそうに「海に入ったように力が抜ける」と弱々しく途切れ途切れに言うと、シロクマが前の軍艦の異変にも気づいた。先行の甲板でも一人の大柄の男が膝をついて苦しそうにしている。
「ねえ見て!あっちも同じようになってるよ!」
焦りからか若干言葉が足りないが、充分伝わったようだ。周りに集うクルーも一斉に前方を見た。
恐らく俺と同じで悪魔の実の能力者なのだろうとローはなんとなく推測した。
島に着く頃には力が抜ける謎の現象が収まり、心配していたクルーの顔も安堵の表情に変わった。中には病気なんじゃないかと本気で心配する者も数名いた。
軍艦と反対側の港に船を停め、船番を数人置いて一行は各々必要なものを買いに散った。