第2章 黒になる
鉄で手を拘束され、暗い部屋に入れられた。牢屋ではないものの、牢屋と呼んでもいいほどに空気が重く居心地が悪い。
重い扉が閉まる音がした。ガチャリと鍵のかかる音と、私の後ろにいた海軍が去る音。
壁にもたれてズルズルと座り込み、体の前で束縛された腕を見た。もう二度とこの腕に自由はないのだろうか。
数年間死ぬほど考えた“捕まった先の人生”を思い返した。それだけで体が震える。走り出した船が部屋全体を揺らしキシキシと音を立て恐怖を煽る。
ぐるぐると思考を巡らせるうち、涙が込み上げてきてしまった。まばたきをすればその反動で瞳から堰を切ったように感情が流れ出す。
膝に顔をうずめてとめどなく流れるそれを隠すようにおでこを擦り付けた。
ここはグランドライン前半の海。次の島へ向かう途中の船に揺られている。小雨が降っており、強い向かい風が吹いている。
島に着くのは遅くなりそうだ。
「ベポ!島にはあとどれ位で着く?」
「ん〜そうだな〜ログポースが指す島まではかなりあるから、途中別の島に寄って物資を調達した方がいいかも。」
甲板に大の字で寝そべって雨に打たれているシロクマに話しかけた。「そうか」と返事をして今後の予定を頭で組む。
しばらく雨が続いているが、雨が降るとかえって魚がかかりやすい。だが水中の状況が船の上から確認しにくいので、結局晴天の日よりほんの少し釣れやすくなるだけだ。
魚には困らないが、毎日のように酒を飲む男どものせいで酒が少なくなってきている。前の島を出る時はいくつもの樽を運んだのだが。
食料面だけはきっちりして置かないと海の上では命取りになる。
それに食事が魚ばかりなことにもクルーが愚痴を漏らしていた。しょうがないとは分かっていても、やはり違うものが食べたくなる。
“ログポースが指す島の手前に別の島があれば、そこで食料を調達しよう”と航海士のシロクマに伝えると、大の字のまま両手両足を上に伸ばし「アイアイ!」と弾むような声で返事をした。