第2章 黒になる
家の中にチャイムが鳴り響いた。
どうやらあの後眠ってしまって、既に陽が出ている。
こんな朝早く訪問してくるなんて、一体誰だろう。それとも私が昼過ぎまで寝ていただけだろうか。
寝起きの服装のまま手櫛で髪を整え、急かすように鳴る呼び鈴に「はーい」と扉の奥まで聞こえるように返事をする。
あくびで潤んだ目のままノブに手をかけた。
「はじめまして。海軍大佐のレドスピンです」
見上げると、昨日窓越しに見た顔があった。頭が覚醒し、少しだけ目を見開いた。
「お、おはようございます。どうなさったんですか?」
額に汗を流しながら目をそらさないように問う。彼の後ろには部下だと思われる海軍がずらりと一列に並んでいる。
今走り出しても無意味そうだ。
「よければ、私たちと一緒に来ていただけませんか?」
レドスピンさんは私と同じように貼り付けたような笑顔で腕を伸ばした。
「なぜですか?」
「おや、自分の力に気づいていないのですか?」
私が押し黙ると、レドスピンさんはそのまま続けた。
「そうですね……簡単に言えば、あなたの力があれば我々の世界平和に近づくのです。悪い話ではありません。あなたは海賊じゃない。我々はあなたを傷つけない。」
嘘だ。
この数年、捕まった先を何度想像したことか。
手足を拘束され、力が覚醒するように教育され、子供を産まされ、研究に使われ、散々な目に遭うに違いない。
それは私を追う海軍の面貌から分かる。
「いやだと言ったら?」
目を細め、相手を睨み、挑むような目を向けた。
内心死ぬほど焦っている。今にも逃げ出したい。臆病な私は戦うことなんてできない。
辺りに涼しい風が吹いた。
「無理にでも、捕まえろとの命令です」
言い終わる前に彼の腕が私の腕を掴んだ。「離して!」と虚しく叫ぶも、すごい力で握りしめられる。
私の腕を拘束したまま彼が早足で歩き出す。何も履いてない足を必死に地面に擦りながら、ズルズルと引きずられるように引っ張られる。
「クソッ。まだ能力が使えないのか!?」
彼の能力がどんなものかは知らない。だが能力を使った方が今は都合がいいのだろう。
腕を引いたり押したり、精一杯抵抗してもビクともしない。私はそのまま港の船まで連れて行かれてしまった。