第4章 〈番外編〉君と過ごす1日
(学秀っていい人だなぁ)
改めて感心する。
そういったこと学秀の事を知れて感謝しながらも、今払ってもらったお金を返さなきゃいけない事を思い出した。
「学秀、これ!お金...」
そう言って、映画の料金を差し出した。
私の声に、前を歩く学秀が反応してこちらを向く。が、私の手元を見るとまた歩き出した。
「いい。僕が誘ったんだから、それぐらい払わせろ」
「でも悪いよ!」
「いいって。」
それから何度払うと言っても首を縦に振らないので仕方なく私が折れ、代わりにはならないがポップコーンとジュースは自分が買った。
購入後、両手にその2つを持ち劇場へ入る。当然だがやはり中は暗く、足元が見えにくくなっていた。
ジュースなどを持っているのだから、階段で転けたら一溜りもない。私は、十分に注意して階段を上がった。
「花日」
名前を呼ばれ階段へ意識を向けていた目を移すと、学秀が目を逸らしながら私の方に手を差し出している。
「え?」と思わず呟く。
「どっちか持ってやるから手を貸せ」
突然言われたことに少し混乱しながらもどちらを預けたらいいのだろう。そんな細かいことに迷っていると、ポップコーンの方を取られた。
それを見ていると、気づいたら空いた方の手をとられてて、私を引っ張ってくれていた。
きっと、転ばないように。
今日は...すごく優しいな。
映画にこういう人いなかったっけ。こうやって、デートのようなシチュエーションの時に紳士になってくれるみたいな。
それに、包んでくれている手は大きくて暖かい。
嬉しくなって、
思わず笑みをこぼした。
そうして階段を上り、席へ着いた。
ここは真ん中みたいだ。
座って辺りを見渡す。とても混雑しているわけではないが、それなりに人はいる。