第3章 自覚し出す心
私がそう言うと、学秀は妙に緊張しているのか動作はゆっくりで、そして何処かぎこちなくこちらへ近づく。
それを見て、逆に私は緊張があまりなくなった。
さっきとは全く違い極力触れないよう気遣ってくれているのがわかり、優しいなと思いながらも何故かショックになる。
もっと、触れて欲しいのに。
そう思うのは、何故だろうか。
わからない。
「花日、聞いてるか?」
「あ、うん!」
その後、学秀がいろいろ教えてくれたおかげでなんとか具材を上手く切れる方法はわかった気がする。
...玉ねぎのたて薄切りで太さが違うのは置いておいて。
そして本来ならこの課程の間にパスタを茹でておくとちょうどいいらしい。
だが、きっと時間がかかるだろうと予測した学秀は材料を切ることを先にしてくれたそうだ。
その為、パスタは今から茹でる。
鍋に水を入れ、熱湯にする最中、それだけでも学秀は心配げに私を見てくれた。
多分それぐらいはできると‥思いたい。
だいぶ沸騰してきたと思い、「良いかな?」と言うと学秀は「まだだ」と言う。
「まだ、沸騰してないだろう」
「そうなの?」
「...見てわからないか。」
学秀は呆れたようにため息をついている。
その姿を見て、自分の出来なさに私もため息をつきたくなる。
「まあいい、できた」
すると学秀は慣れた手つきでパスタを入れていく。
本当は手伝わなきゃいけないのに、指細いなあ、なんて関係ないことを考えてしまった。