第3章 自覚し出す心
それからまず私達は材料を切るところから取り掛かった。
やはり...頑張ってはいるが歪な形にウインナーがなってしまっている。一緒に切っている学秀の手元のウインナーを見ると、明らかに私とは大違いだ。
げんなりして、ため息をつく。
それを聞いたのか学秀はこちらを見た後、ウインナーも見た。
「...お前、どうしたらそうなるんだ」
きっとこれは嫌味でもなんでもなく、ただの本心だろう。声からしてわかる。
私も知りたいぐらいだ。
「普通に切ったらこうなったの...」
「ちょっとやってみろ」
そう言われたので先程と同じように1個切ってみせる。
すると、それを見ていた学秀は私の背後に回り、私の手の上から包丁を握った。
当然、近い距離で、手も触れている。
・・・ドキドキしないはずがない。
「違う、ちゃんともっと包丁握って」
「うん...」
さらに...耳元で言われるとかなりやばい。とにかくドキドキしすぎて頭が真っ白になり、学秀が言ってることも耳に入ってこない。
「っ!悪い、考えてなかった」
私がどうして曖昧な返事をしていたのかわかったのか、咄嗟にばっと手を離し、離れる。
学秀はそういう事を考えずに、本当に心配で教えてくれてたのに...私は考えて意識をしてしまった。
なんだか自分が恥ずかしくなった。
「ごめん、学秀は何も考えてなかったのにっ...」
「いや、僕が悪かった。すまない」
そう言う学秀は顔が真っ赤になっていて、耳まで赤い。この状況でこういうことを考えるのは不謹慎だが、可愛いと思ってしまった。
そんな学秀は、こちらを向き目を逸らしたまま言う。
「だが、それじゃ心配だ。すまないが今だけいいか?」
もう一度あのドキドキがあるのかと思うと動悸が早まってくる。
だが、学秀はそういうつもりで言ったわけじゃないのだ。そう思い、なんとか抑えた。
「じゃあ、お願いします」