第1章 始業の時
「よー、渚くん」
「カルマくん、いつ学校に来るの?」
「んーもうちょっとしたらかな?」
そんな他愛ない話を聞きながら、"カルマ"と呼ばれた人を見る。
それに気づいたのかその人も私を見た。
「あれ?この子は?あー渚くんの彼女?」
いきなりそんなことを言われて、びっくりしていた私を放って、渚は拒否をしてくれた。
「違うよ!この人は明音といって僕の幼馴染なんだ。」
「そうそう。渚と同じ椚ヶ丘に通ってるの。」
椚ヶ丘、と私が言った時、カルマさんの顔は少し歪んだような気がした。
勘違いかなと思ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。
次の瞬間、さっきとは打って変わった全く違う表情をして、私に言う。
「へえ、じゃああんたも本校舎のやつと一緒なの?」
・・・え?
動揺して何も答えない私から視線を外し、渚に移す。
「渚くん、いーの?」
「ち、ちがう!花日は、そんな人達と同じじゃないよ!カルマくんは知らないかもしれないけど...すっごく良い人なんだよ?」
渚は、いつも私をそんな風に言ってくれる。
さっきだって。
(渚...)
「こいつがどうかは知らないけど、信じない方がいいと思うよ?渚くん。」
さっきまでとは違う不敵な笑みを浮かべながら、カルマさんは颯爽と歩いていった。
なんだったんだろう...