第1章 始業の時
「おかしいのは、花日のほうだろう?ここはそういうところだ。」
「…もういい。」
もうそんなこと聞きたくなくて、とりあえず背きたくて、渚の腕を引き歩き出す。
あの人は、どこか壊れてしまっている。
そのまま早く歩き、門の外へ出た。
「なんでこんなことしか言えないんだ...」
門の外へ出たものだから、置いて行かれた学秀のつぶやきは小さくて聞こえていなかったーー。
ーー
「ねえ、浅野くんと何かあったの?」
渚は心配そうな顔をし、私に問い詰める。
「う~ん...そういうわけじゃないけれど..なんだか、学秀からああいうこと聞くの嫌なの」
「そうなんだ。そういえば、さっきはありがとう!僕...黙ってることしかできなくて..ほんとかっこ悪いよね」
(そんなこと、ないのに…)
私だって同じだ。
それに、もし自分だったらきっと耐えられないと思う。
「そんなことないよ....」
それ以降、他愛ない話をしていると途中で渚は歩くのをやめた。
「渚?どうしたの?」
渚を見ると、渚は別の方を見ていたので同じ方向を見る。
前から、赤い髪の男の子が歩いてきた。
「…カルマくん」
渚がつぶやくとそれに反応したように、赤い髪の男の子はこっちに寄ってきながら手を振る。