第3章 自覚し出す心
「...っ」
「俺、知ってんだよ。なんでこの子が落ちたのか。」
私は今以上に涙が溢れて来てしまいそうで、必死に抑えていた。
また...助けてくれた。
いつも私が本当に困っている時に助けてくれる。
「...花日、行くよ。」
場が固まっている中、業さんは振り返り私の手を引く。
みんなが見ているから恥ずかしいとかはなくて‥‥
ただ、
掴まれている手に、
温かさを感じて安心してもっと泣きそうになった。
あと数分経ったらテストを受ける準備をしなきゃいけないのに。
きっと、こんなに泣いたんだから跡がついてるはず。何があったのかと他の人に心配されるだろう。みんなが居る所には行きたくない。
でも、テストは受けなきゃいけない。
そう考えていたのを察してか、校舎の人気のないところまで連れてきてくれた。
私にかまっていたら...後数分したら遅れてしまうのに。
考えるとまた鼻がツンとなって涙がこみ上げてくる気がした。
「あいつら考えてることヤバいよね〜中学生で身体売るとか、なわけねえだろ...って思わない?」
「う..ん」
「もう、泣くのやめなよ。悔しくないの?泣かされて。」
そんなの...絶対に。
「悔しいよっ...すごく悔しい。情けないって思ってる」
私がずっと思っていたこと...それを聞いている業さんを見ると飄々としている。
「じゃ、泣かないでおこうよ」
「...そう言われて簡単に泣き止むわけないじゃん...」
「わかったよ、じゃあーー」
背中に手を添えられて、気づいたら目の前にハンカチがある。私はそれを受け取って泣き続けた。
さらにさっきより明らかに勢いが増していたけれど、その事について業さんは何も言わなかった。
あの時は分からなかったけど、
本当はーー
溜まっている思いを吐き出すよう、拍車をかけてくれたんじゃないか。
今となってはそう思う。