第3章 自覚し出す心
「なあ見て、天野じゃん」
「わ、ほんとだ。あいつ可愛かったから狙ってたのに...E組なんかと付き合ってるなんて知られたら恥ずかしいし、無理だよな」
聞きたくなかったのに。
嫌でも私の噂話は耳に鮮明に入ってくる。
ううん、正しく言うと...
聞こえるようにしているのかな。
心なしかそういう風に思えた。
「というか、あの子なんで落ちたの?」
また、別の人が私のことを言っている。
自分の近くにいる人の話は私で持ちきりみたいで、「あんな見た目ですごい問題起こしたらしいよ」とも聞こえてくる。
問題?どういうこと?
思わずそれを言った人を見る。
すると、目が合ったが逸らされた。
「身体を売ったって私は聞いたよ?」
「うそ、私は男を騙したって!」
(どう...して)
もう歩く力もなくなり、無意識に立ち止まり下を向く。
私はそんな風に思われていたの?
何も...していないのに。
やっていないことで噂をされる。
そんな事ってないと思う。
「まあどっちにしろやばいよね〜ちょっと可愛いからって調子に乗った罰じゃない?」
以前同じクラスだった女子はクスクスと笑っている。
すごく辛い。
息苦しさに思わず胸を掴む。
目の奥が熱くなってきていて、視界が霞んでいく。
出てくる涙なんて気にもせず、思った。
こんな事少し言われたぐらいで、泣くなんて。自分は思っていたより弱い人間だったのだと情けなくなった。
「へえ、それ実際に見たんだ?根拠あるんだ?」
泣いていて、気づかなかった。
私の前には不機嫌そのものの顔をした業さんが立っている。
「...そういうんじゃ、ないけど...な、何が言いたいの!」
「あんたが勝手に言ったことで、何も悪くない花日傷つけんのわかんない?はは、本校舎の奴らは勉強以外、頭幼稚なんだね?」