第3章 自覚し出す心
私...何について、
一番喜んでいるんだろう?
「...花日?どうした?」
料理が上手になる事?
ううん...違う気がする。
じゃあ、どうして?
「おい!」
「あっ...ごめん」
私はどうやら考えに浸っていたせいで聞いていなかったみたいだった。
「ちょっと...考え事してた」
「もしかして、嫌だったか?それならやめるが‥--」
「嫌じゃない!」
途中で遮ってまで発した言葉。
絶対に誤解だけはされたくない。
そう思うのは何故かわからないけれど、勘違いなんてされたらと考えると心苦しくなる。
「違うよ、嬉しいよ..」
「だったら、良かった」
そう言ってこちらを向いた時、見せる顔は心からの笑顔。安心を含ませるその顔は作り笑いではないと語っている。
なんで、何これ...
「じゃあ、ここで。また放課後な」
「う、ん...じゃあね..」
気づいたら、いつも学秀と分かれる道にいた。自分の方に背を向けて歩く彼を見て、私もE組校舎へ歩き出すことにした。
程なく歩いていると、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえたので振り返る。
いたのは渚だった。
先程のことを考えるのでいっぱいだった私は、あまり深く考えずあの事に関連するような話題を話してしまったのだ。
「花日ってそういえば料理苦手だったね..」
「知ってたの..」
「そりゃね。そうだ、今度教えようか?」
「あ...」
何故だろうか。
さっきと気持ちが全然違う...。
渚が嫌ってわけじゃない。
ただ、学秀の時と違いすぎる...
「だ、大丈夫!ありがとう。ごめん、朝用事があったから先行くね!」
「あ、うん‥」
用事なんてないけれど、到底今は普通に会話できそうにない。その為、適当に言ってしまった。
走りながら思う。
どうして私、
学秀のあの笑った顔にドキドキした?
どうして、
学秀との約束に嬉しくなった?
どうして、
今こんなに顔が熱くなっているの?
まだ‥‥
今の私にはわからないみたいだ。