第3章 自覚し出す心
《 業 side 》
「えっ...どうしたの?」
他の人達の前にはそれぞれお茶やジュースが置かれている。ところが自分の前にあるのは普段結構飲むことが多いいちご煮オレだ。
先程、お茶と言ったはずだ。
(もしかして...)
最初から用意してくれていた?
驚き花日ちゃんの顔を見ると、少し心配してるような事が伝わった。
「...ありがと、知っててくれたんだ。俺がこれ好きなこと」
そう言うと、花日ちゃんは微笑んで、嬉しそうな顔をしている。
「なんかね...渡したかったの!良かった、買っておいて」
単純に嬉しくなった。
彼女の前で何度かジュースを手に持っていたと思う。
・・・それを覚えてくれていた。
頬が緩むのを何とか抑えながら、参考書やらノートやら勉強に必要なものを取り出す。
最初は6人で勉強道具を出すとなるとかなり机が大きなくなきゃまずいのではないかと考えていた。
が、飲み物を出す際に花日ちゃんが引っ張って来た大きな机だと大丈夫なのだと安心する。
と言っても、自分が今回誘われて来たのは他でもない花日がいるため。あまり関係がない。
勉強はきっと今やらなくても大丈夫だろう。
「花日ー!ここ教えてくれない?わからなくて」
「あー!そこ難しいよね。じゃあまず基礎からでーー」
見ると、どうやら花日ちゃんに分からない所を茅野ちゃんが聞いているみたいだった。
勉強に集中はせず説明を聞いていると、丁寧で的確...そして分かりやすい事がわかった。きっと勉強がよくできるのだろう。
あわよくば教えてあげたいと思っていた自分が少し馬鹿らしくなってくる。
「ーーおーい、カルマ!」
向こうに意識を向けていたため気づくのが遅れてしまった。声の方を向くと、前原が声を掛けてきたのだとわかった。