第3章 自覚し出す心
「――っていうことがあったの。」
「へえ...」
なんて言われるかな。
気になって視線を向けると、業さんは下に目線を落としていた。
「花日ちゃんは悪い事言ったの?」
「え?」
「素っ気なくされたら嫌じゃない?」
「で、でも...学秀は元々そういう人なのかもしれないし...」
(私のわがままじゃないの?)
学秀から一緒に行き帰りしたいと言った。
それは私を励ますため?
E組に行った私を?
あの車通学だった彼が誘うとしたらそれしかない。
「俺は不満に思ったことがあるなら言った方が良いと思うけど」
「そっか...」
返事をすると何だか...
胸がぎゅっとなって、じわりと目が熱くなる感覚がした。
誰かに相談することによって
安心したのか。
それとも、業さんが真剣に
相談に乗ってくれたからか。
今の私には分からなくて。
そしてもう一つわからなかったこと。
それはーー
(あれ...なんで私...)
今、学秀の事を話してたはずなのに...
業さんの事考えちゃってる。
私の様子を見て何かあったのか
気にかけてくれて。
一緒にここまでついてきてくれる。
「何で泣いてんの?」
「何でもないっ」
まだ・・・
何を考えているのかはわからないけど。
すごく、すごく。
優しい人なんだって事はわかった気がする。
だって、ほら。
今だって私が泣き終えるまで待っていてくれてるから。
学秀に言おう。
私の我儘を。そしてその後に謝って...
他の人ともたまには帰りたいって事を言ってみようかな。
「もう大丈夫っ」
「いいの?泣いてたのわかっちゃう痕あるけど」
「あー!!」
柔らかな風が吹いている。
業さんと話している時に当たった風は普段と全く違うくらい心地が良かった・・・ーー。