第3章 自覚し出す心
《 学秀 side 》
少し日差しが強いが、
そんな事は気にすることなく歩く。
ーー知らない。先生に呼ばれてんじゃない?
あいつのあの言葉…
何か気掛かりだ。
僕に単に教えたくなかっただけ?
いや‥‥なんとなくだが違う気がする。
(じゃあ、なんなんだ?)
これだ、という明確な答えが出てこない。
もしかしたら...
あまり気にすることじゃないのかもしれない。
赤羽は掴みどころがないやつだ。
何を意図したのかは知らないが、たまたま答えたのかもしれないし、本当に帰ったのか知らなかっただけかもしれない。
そう必死に自分を説得しても、
何故か胸がざわめいて頭から離れない。
「学秀、どうしたの?」
僕が視線を向けると、不思議そうな目で自分を見つめる花日がいた。
「なんか険しい顔になってるよ?」
「あぁ...ごめん。」
「学秀らしくない」だの、「険しい顔は元々か」だの花日は茶化してくるが、同じように返す気にはなれない。
花日との話は嫌いじゃないのに。
それができないほどに、
先ほどの事が気になっていた。
「ねえ、学秀」
名前を呼ばれ、思考を止める。
今度はしっかり耳を傾けた。
花日の声が...何となくだが沈んだ気がしたからだ。
(...花日?)
自分が適当に話を流していたからか。
怒ってしまったのかもしれない。
僕が花日の方に目を向けると彼女は話をそのまま続けようとしていた。
何も言わないので、
声をかけようとした時ーーー。
気まずそうに。
消え入りそうな声で。
...もし私が他の人と帰る時があるよって言ったら学秀はどう思う?
と・・・確かに口にした。