第3章 自覚し出す心
殺風景で静かな廊下を歩き、下駄箱へと業は向かう。靴をしっかり履きながら外へ出た。
明日こそ、
一緒に帰れるだろうか。
きっかけを何か...
掴めるだろうか。
などと思いながら。
出たところで目に捉えたのは・・・
学秀だった。
あいつと話すことは何もない。
しかし、なぜわざわざここまであの長い階段を登って来たのか。
何も用事はないはず。
そう思いながらも、話す用はない。
そのまま通り過ぎようと業は考え歩いていたが、それを学秀は遮る。
一方学秀は花日はもう帰ったのだろうかと不思議に思い、聞かずにはいられなかったのだ。
花日は勝手には帰るような人ではない、と考えていた。
「花日知らないか?」
「知らない。先生に呼ばれてんじゃない?」
なぜ花日を探しているのか。
とてつもなく業は気に入らなかった。
業の反応を見て、学秀は察する。
「...帰ったとは言わないんだな」
「っ!」
思わず業は歩いていた足を止め、振り返る。
結果的に教えてしまったというのと、
何故花日を探していたのか。
それがわかったからだ。
もしかして・・・
さっき言っていた“帰る人“は・・・
すぐ目の前にいるこいつ。
学秀はそれっきり業に何も言うことなく、下駄箱の方へ向かっていく。
だが・・・
花日が言っていたのだ。
止める権利はない。
必死にこらえながら、業は校舎から遠ざかる方向を歩いた。