第3章 自覚し出す心
《 学秀 side 》
何度かその花日が告られる場面に偶然遭遇したことがあるため、知っている。
自分は見てしまっただけだけれど、中には花日がどう返事するかが心配でわざわざ見に来ている輩もいた。
ーー花日さん!好きです!付き合ってください。
周りの奴らがドキドキする中。
ーー...ごめんなさいっ
そういって律儀にぺこっとお辞儀をする。ふと、辺りから息を吐く声が聞こえた。
安心しているのか。
ーー...私、そういうのわかんなくて。
印象を受け今でも覚えていた記憶が顔を出した。
あの時は花日の事が好きな男の気持ちは分からなかった。
昔からの仲で近い存在ではあったけれど、何とも思わなかった。
いや、正しく言えば恋を知らなかったのかもしれない。
だが最近になって、花日の素直さや可愛さに気づいてしまったのか、やっとわかって来た。
花日が今まで散々告白を断って来たわけだが、今になってよかったと思う。
知らないなら、僕が教えれば良い。
焦らず、ゆっくりと。
これまでの過去の分析だが、どうも花日が極度の鈍感であることは椚ヶ丘中でも広まっているらしい。
その為、惚れていた奴の間で花日を彼女にするのは夢のまた夢という風になった。
だから、あまりみんな攻めていない。
ということは、異性として一番近いのは自分ということになる。
潮田渚という人もいるが、大丈夫だろう。
E組にも見た様子、距離が近い人はいなさそうだ。
きっと教えられるのは自分だけのはず。大丈夫。