第1章 始業の時
きっとあれを見ていた人が暴力沙汰だと勘違いし、このように理事長に話したのではないか、と私は仮説を立てる。
理事長からしてみれば、こういう問題は学校の評判上良くないことなのだろう。
本当は何があったか知ってるはず。
私にはそんな風に思える。
「わかりました。」
私がそう頷くと、驚いたように理事長は目を見開く。
「嫌じゃないのか?君が私に頼めば、今回のことは黙ってあげることだってできるんだよ?」
それに、と理事長は言い、また言葉を紡ぐ。
「君は到底E組に落ちるような成績じゃない。もったいなくないか?」
これだからこの理事長は。
椚ヶ丘が激しく人を差別し蹴落とす教育方針は、この人のせいだと思う。
「私は嫌じゃないです。すくなくとも、嫌と言って貴方の言う合理的な教育方針、に付き合うつもりも毛頭ないので。」
心の底から笑っていない理事長をしっかりと見て最後に挨拶をした。
「じゃあ、明日からあっちの校舎に行きます。」
「ああ。」
その返事を聞きながら後ろを向き、扉の方へ向かう。
失礼します、といって部屋を出た。