第1章 始業の時
「お兄さんたち、そういうことやめなって」
軽そうな口調が聞こえ、その声がした方に視線を向けると、そこにはカルマさんがいた。
「カル、マさん・・・」
「だいじょーぶー?ちょっと待っててね」
カルマさんがどうして此処に来たのかわからないという疑問もあったけれど、何より安心した。
仲間のうちの1人が倒された事に怒りを感じたのか、てめえ、と言いながらもう1人がカルマさんの方へ向かう。
だがそれは、カルマさんによって止められ、倒されてしまった。
(すごい...)
ぼーっと見ていると、カルマさんが私に声をかけてきた。
「どっか怪我とかしてない?」
「あ、あなたこそ」
「俺はだいじょーぶ。」
(良かった...)
カルマさんがもし怪我してたら、それは私のせいだ。
そんなことを考えながらも、一番言いたかったことを口にした。
「ありがとう、助けてくれて。困ってたから」
「ぜーんぜん。」
でも、と付け足し、私は言った。
「殴る以外、何か方法とかなかったかな...?」
それを言うと、カルマさんはフッと呆れるように笑う。
「けどさぁ、それだと確実に今花日ちゃんヤバかったと思うよ?」
確かに言われたとおりだ。
自分を助けてくれたのに暴力を振るわないでほしいなんて。
(無理がある、よね)
そうだね、と返事をし、そのままその場を離れた。