第1章 始業の時
今日はじめじめとした雨だった。
カバンに入れておいた折り畳み傘を開き、昇降口から出る。
(朝は晴れてたのに・・・)
そんなことを考えながら、雨で水溜りができている道路を歩いた。
しばらく歩き、電車に乗って家に近い駅で降り、家へ向かう。
歩いている途中、面倒な事にあってしまったのだ。
「よう、君1人か?」
「これから俺らとどう?」
こんな雨の日でも、懲りずにこうやって誘ってくるなんて。
迷惑と怒りを通り越し、呆れてしまう。
こんな風に声をかけられるのは、もう慣れっこだ。
去年あたりから何度目か。
「あの...すいません、急いでるので」
顔も見ず、おきまりの台詞を放ち、その場を後にしようとした。
たいていは諦めてくれる。
が、そうは今回はいかないみたいだった。
「待てよ」
不意に腕を掴まれて引っ張られた。
それで、持っていた傘が手から落ちる。
そんなのも御構い無しに男の人たちは、ちょっとぐらいいいだろ、と言ってきた。
私が腕を離そうとしても、それを男は許さなかった。
「無駄って、わかんねえのか?」
さすがにやばい、と思った私はさっき以上の力を込めて必死に払おうとする。
それでも、その抵抗は全く意味がない。
「は、離して!」
「大人しくついてこい」
そう言いながら、連れていかれそうになった時。
男の人はドサッと音を立てながら倒れた。