第1章 始業の時
《 業 side 》
「あーごめんね?それに、俺と話してるのイヤでしょ?」
さらに追い打ちをかけたいのか、自分がどうしたいのかわからないまま、黙っている彼女に話しかける。
どうせ黙るか怯えるかだ。
俺のことを知っているなら。
しかし帰ってきた答えは予想外で・・・
「えっ?なんで?別にそんなことないよ!?」
今までの人達と少し違った答えに、戸惑ってしまう。
少し前まで遠慮がちにしゃべっていたこの子は、今では活き活きと俺に答えている。
(...言うことなくなっちゃったじゃん)
少し呆れながら、心の中で呟いた。
困ったのか嬉しいのか。
それがどちらなのか判断するのは、今はどうだっていい。
自分でも無意識に、胸を躍らせながら目の前の子に言う。
(花日って言ってたよな)
先ほど渚くんと交わしていた会話を思い出した。
「そっか〜、それじゃあね。花日ちゃん。」
よくわからないけれど、名前が呼びたくなったので名前もつけて言った。
言った直後、くるりと振り返り、そのまままっすぐ歩く。
さっきあった事を思い出すと同時に、快いこの気持ちを感じながら。
花日か...
そこら辺のやつとは少し違うのかもしれない。
強い者に従い、弱い者をいじめるやつらとは。
俺の中でなんとなく、興味が湧いた。
彼女が本校舎にいるのが惜しく感じる。
停学明け、俺はE組だ。
・・・こっちに、くればいいのに。
花日がいた道から遠くなったところで、業はそんな風に思った。