第1章 始業の時
その言葉にカルマさんは一瞬目を見開いた後、穏やかな顔をしていた。
「そっか〜、それじゃあね。花日ちゃん。」
私の名前を呼び、言いながらくるりと後ろを向いて行ってしまった。
それを聞いて私はカルマさんがいた道を過ぎ、家へと帰った。
(急にどうしたんだろう?)
なんだかさっきと雰囲気が違う。
言い方も変わっている。
それにーー
(名前...)
さっきは"あんた"だったのに。
名前呼びに変わっていた。
今日会ったばかりの人を、これほど気になるとは思わなかった。
きっと不思議な人だから気になっているんだと思う。
そして、周りと同じように私もあの人が怖いと思っていた。
だけど...そんなこともないのかもしれない。
話し方からして、普段は穏やかでいい人なんだと思う。
さっきまで浸かっていたお風呂から出る。
そんなことをしながら、また考えが頭をめぐる。
でも...
きっと渚経由でしか会わないだろう。
だから、そこまで考えなくてもいいのかもしれない。
そう思い、私は体を拭き、髪を乾かした。