第1章 始業の時
「話してくれてありがとう、渚」
「いや...花日がそんなに聞いて来るとは思わなかったけど。」
「なんだろう...気になっちゃって」
その後は、渚とは違う駅なので電車に乗って別れた。
駅から出て、私は帰路を歩く。
途中でーー
さっき会った"カルマ"さんを見つけてしまった。いちごオレのジュースを手に持ち、イヤホンを耳にしている。
なんでここにいるのか、何をしてるのかという疑問よりも、あることが浮かんできた。
(さっきあんなこと言われた後に会うなんて...複雑だよ)
家へ帰るにはカルマさんがいる道を通るしかない。
とりあえず、気づかないふりをして通り過ぎよう。
真っ直ぐ歩こうとすると声をかけられた。
「あれ、さっきの?」
カルマさんは私の方を見る。
びっくりしてビクッと体が動く。
(き、気づかれた!!)
「あーえっと...」
無視もできないし、とりあえず何か声をかけようとするが何も言葉が浮かんでこなかった。
「家こっちなんだー?」
「う、うん」
思いがけないことを聞かれて、ぎこちない返事になってしまった。
「あっれ、さっきのこと気にしちゃってる?」
「....」
「あーごめんね?それに、俺と話してるのイヤでしょ?」
それまでどこか遠慮がちに話していたが、そんなことを言われて思わず本音が飛び出した。
「えっ?なんで?別にそんなことないよ!?」