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【暗殺教室】恋をする瞬間をあなたに

第5章 募る想い





’’ううん、本当に...大丈夫だから’’



そう言い、穏やかに微笑んでいたあの子。先程は本当に大丈夫なのだろうと思っていた。

‥‥けれど。



(やっぱり心配だ)


今思えばあれはもしかしたら、
作り笑顔だったかもしれない。


会話を交わした時に浮かべた彼女の表情を必死に思い出す。
それが明確に頭に浮かんできた時...確信に変わった。

もう一度改めて考える。
怯えを隠しきれていなかったような気がした。


踵を返し、もう一度さっき歩いてきた広い廊下を渡る。


本当に大丈夫なのか、と聞いてみよう。何もないというならその時はいい。

もし今も怯えているのだとしたら、不安は全部は拭えないかもしれない。


どちらでもいいし、何でもいい。
さっき会ったばっかだが、今すぐに彼女のところに行きたい。


その思いは強くなり、歩く足も早まる。

先程彼女がいたところに着いたが、いない。もしかしたら、外に風に当たりに行ってるのかもしれない。


ドアを開け、辺りを見渡す。


すると、声が聞こえてきた。
女性が泣く声だ。

もしかして。


声のした庭の方へ行くと、やはり声の主はあの子だ。

気がついてよかった。
彼女が泣いた時は、自分が支えてあげたい。


彼女の方へ足を進めようとしたと同時に、他の人の声が聞こえ動きを止める。

思わず建物の死角に身を潜める形となった。



「守れなくて...すまなかった」



声を認識し、誰だかわかった。
思わず息を飲む。


その声の奴は、一番あの子に関わってほしくなかった相手。


死角から顔を出し、その場の状態を捉える。

自分がしたかったことをあいつはしていた。それは...彼女を抱きしめるということ。


本当は邪魔したかった。
だが、何故それをしなかったのか。


簡単だ。
自分は案外冷静だったらしい。

泣くのがだんだん治ってきたのがわかり、あの子は俺といるよりあいつの方が安心しているみたいだと、感じたからだった。


俺が安心させてやりたかったのに。

‥‥この想いは、彼女へは届かない。






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