第7章 ぷろぽーずはまだ?
―夕方のこと。
「今日なに着ようかな〜。三成くんならやっぱりこっちの色かな…?」
付き合って初めての誕生日にもらった着物は三成らしい淡い藤色と黄色のグラデーションが綺麗な生地で、藤の花が刺繍されているもので、お揃いみたいですごく嬉しかったのを今でも覚えている。
「やっぱりこっちにしよう!」
歌恋は悩んでいたもう一つの方の着物を選び、藤の花の簪をさし、三成の待つ裏庭へと向かった。
「ちょっと早いけど、ここで本読んで待ってよう!」
三成と付き合う事になり一年。
まだキス止まりの関係に少し寂しさを感じていたが、三成なりのきっと考えがあると思って我慢していた。
「信長様、三成にございます。」
「入れ。」
その頃三成は歌恋を養子に迎え、自分の娘として傍に置いてる城主信長に許しをもらいに来た。
広間の上座の肘掛にもたれ掛かり、座る信長の前に三成が頭を下げ話し始めた。
「本日で約束の一年になります。これから歌恋様には思いを伝えるつもりでいます。父である信長様にその前にお許しを頂きに参りました。」
「今日があの日より一年か。」
「はい。」
「この一年お前はよくやった。戦術を練り、顕如一派の討伐に役立った。本来であればその時に許しを与えるつもりだったが、一年という約束をしっかり守り約束通りここへ来た。歌恋を嫁にやるのは本意では無いが、認めてやる。なぁ秀吉?」
「秀吉様?」
襖越しに秀吉がいた事に気づかなかった三成は驚いたが、その後の秀吉の言葉でその驚きは違うものに変わった。
「お気づきでしたか・・・。」
「当たり前だ。」
「三成と歌恋の事、認めてやるとしよう。」
信長がニヤっと笑を浮かべながら二人を見た。
「ありがとうございます!信長様、感謝致します。」
「俺の娘を嫁に貰うのだ。泣かせる事があればすぐに城へ連れ戻す。」
「はい。」
「よかったな三成。さ、あいつが待ってるんだろ?」
三成は二人に深々と頭を下げ歌恋の元へ向かった。