第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
「歌恋大丈夫?疲れたら言って。」
「うん。大丈夫。でも馬に乗って風を感じるって気持ちいいね!」
「そう。ならよかった。もう少しかかるから。」
朝早くに安土城を発ち、1頭の馬に二人で乗って朝から少し飛ばし気味で進む。
あまり外に出掛ける事がなかった歌恋に見せたい景色がある。
しばらく走ると……
「ついたよ。」
「ここは……?」
着いた所は寒椿が一面に咲き誇る場所だった。
『綺麗……』
「ここ、陽が高くなる前にくると1番綺麗に咲いてるって。」
桃色と紫の間の独特の色した花が敷物の様に斜面に沿って咲き誇る。
朝露に濡れ朝日が照らしキラキラと輝き、花がいっそう輝く。
「どうしてここを?」
「遠方に行った帰りに通ったんだ。その時はまだ蕾で咲いてなかったけど。」
「凄く綺麗だね!!」
そういった彼女の横顔は花にも負けないくらいキラキラと輝いていて綺麗だった。
その顔を見てちょっとドキドキしたのは絶対言えないけど……
「ありがとう!」
「うん。」
この花に花言葉なるのがあると。
それは……
【申し分のない愛らしさ】
そんな事を波夢に聞いた。
歌恋にぴったりだと思った。
俺にとっては本当に申し分のない程に愛らしく、この世でたった一人初めて愛する事を教えてくれた大事な人だから……
それから町へ出て二人で食事をして、買い物して、ただの『徳川家康』
とただの『歌恋』として過ごした。