第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
夕方、日が暮れる前にと徳川家が管理するとある宿に着いた。
そして夕餉を取り夜も更け……
『湯殿の準備が出来ております…』
宿の物からそう声をかけられるも互いに黙ったままだった。
「先、湯浴みしてきていいよ。」
「えっ……うん。」
(分かってはいるけど、いざとなるとなんでこんな事しか言えないんだ……。)
夕餉の後から互いに雰囲気がなんとも言えない緊張感が張り詰め、ようやく出たのがあの言葉。
「家康は……入らないの?」
「後からもう一つの方入る。」
「そっか……」
―それからしばらくして
二人が上がると布団は意図したかの様に一組だけ敷かれていた。
「っ……!!」
「っ……、宿の者にいってもう一組……」
「……うぶだよ……。」
「えっ……?」
「大丈夫だよ……、家康と……家康と一緒がいい……」
「歌恋……。」
そっと歌恋の背中に手をあて、中へとりあえず入り、二人とも布団の上に正座で向かい合う状態に……
「家康……」
「っなに?」
「お誕生日おめでとう!」
「えっ……」
「ずっと言いそびれてたから……」
(湯浴みした後だからなのか、それとも照れて恥ずかしがってるからなのか……頬を赤らめてちょっと上目遣いで言われて可愛さの破壊力で俺の心の臓持たないんだけど……)
「っ!、あ、ありがとう……」
「わ、わぁっ!」
「なんなの、もう……」
徐にバサっと寝着の音を立てて歌恋に抱きつき、首元に家康の顔を埋め、そのまま囁いた。
「えっ」
「さっきから可愛すぎてめちゃくちゃにしそうな程なんだけど。」
「……いいよ。家康で私の事めちゃくちゃにして。」
(あぁーもう、なんてこう俺を煽るのが上手いんだ……。大事にしよう、優しくしようと決めてきたのに……)
「ん……っ。」
首元にいた家康の顔が急に近づきそのまま歌恋の唇を塞いだ。
「ん……はぁ……」
「優しくしようと決めてたけど、出来ないかもしれない。」
そっと布団に歌恋を寝かし、上から見つめ再び唇へと深い口付けを合図に始まった……