第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
―歌恋目線―
家康の声がして慌てて引き出しに薬は閉まったけど、自分の手が思ったよりも傷だらけで見せられるものでは無かった。
後ろに回して見せないように…、明日の宴の料理のことやお守りの事も知られてはいけない……。
そう思ったのに……
不意に手をぎゅっと握られそのまま家康の前に差し出すような体勢に……。
わわわ……近い……。
ドキドキしちゃうからそんなに見ないで……。
そう思い目を閉じてしまった……。
目を閉じて少しすると、指や手に少しひんやりとした感覚が……。
恐る恐る目を開けると、指には綺麗に包帯が巻かれていた。
「あっ、ありがとう……。」
「全く、あんまり無茶しないでよ。」
「う、うん……。」
「これ、置いていくから。」
「あ、あり、がと……」
チュッー
私の手に家康が自分の手を重ねて、そっと労わるように、俯く私を見つめながらそう言って額に優しく口付けをして部屋を後にした。
(っ……相変わらず慣れないな…。でも……嬉しい……。明日は頑張らないと!)