第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
宴前日
湯浴みを済ませ、部屋で波夢から貰った家康が作った傷薬を塗り直そうとしていると……
「歌恋……起きてる?」
(えっ!?家康!)
慌てて引き出しにその薬を仕舞い、返事をすると家康が部屋に入ってきた。
「どうしたの?こんな時間に……?」
「明後日と明明後日、二人きりで出掛けるから。」
「えっ……?二人きりで……?」
「うん。だから明日の宴早めに切り上げておいて。」
「嬉しい……けど、お兄様は大丈夫なの?」
以前もこのような事が企画されるも、当主である信長の許可が出ずに、結局実現せずじまいだった。
あの時はまだ恋仲になって日が浅いからと猛反対し、その際、初めてとも言うほどの大きな兄弟喧嘩に発展し大騒ぎだった……
「うん。今回はちゃんと許可もらった。それより、なんで手を隠してるの?」
「べ、別に……あっ……」
家康との話中、ずっと腕を後ろに回し傷を見られないようにとしているも、
目の前に顔が迫られ仕方なく腕を前に持ってきた。
「どうしたの?これ。こんな傷だらけで、しかも、これは火傷の跡みたいだけど?」
「ちょっと政宗に料理教えて貰ってて……」
「貸して。」
「あっ……」
不意に手をぎゅっと握られ、思わず目を瞑ると、家康が懐から何かを出すと傷口や火傷の箇所にひんやりとした物がぬられたのがわかった。
「はい、出来たよ。」
「えっ……?」
目を開けると、傷口や火傷の箇所に綺麗に包帯が巻かれ、治りかけの場所にもうっすらと薬が塗られていた。
(全く……こんな綺麗で華奢な手で何してるんだろ……。こんな傷だらけになるまでやるなんて……)