第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
「んんー中々難しいね……。」
「そこは下から……そうそう!」
裁縫などやったことの無い、歌恋にとっては読み書きを習う子どもの様だった。
指は針で刺した傷で包帯だらけ。
それでも愛しい恋人の為、初めて贈る物だからとひと針ひと針丁寧に刺繍を施していた。
―その頃家康は……
「あれ?歌恋いないの?」
「はい、歌恋様なら波夢様の所にいらっしゃいますよ。」
この所、秀吉や光秀から気になる事を聞き、仕事の合間に部屋を覗いて見に来たのだったが……
「そう、わかった。」
(なんだ、居ないのか……。てか、波夢の部屋って何してるんだろう……)
ふとそう思い向おうとするも、家臣や秀吉やらにつかまり結局夜まで身体が開くことはなかった。
(とりあえず、傷に効く薬だけ後で届けにいこう……。)
歌恋の指に包帯が巻かれてるのを耳に挟んだ。
御厨にも政宗と居たとも聞き、なんでだろうと確かめたいと思いながらも、年末の忙しさと来月に二日程休みをとるためにかなりの仕事を詰め込んでいた。
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