第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
少し時は遡り……
安土某所
少し小高い丘の上に、一軒の大きな屋敷があり、そこは安土城城主の織田信長が管轄する屋敷だった。
あまり公にはされてない織田の娘がそこには住んでいた。
「えっ?お兄様が祝言を……?!」
しかも、相手は500年後の未来から来たという……
「それでだ、歌恋。」
「はい。」
『しばらく安土城で暮らせ。』
「えっ?なんで……?」
別に安土城までは馬でいけばそんなに時間のかからない距離。
祝言の前後ならまだしも、しばらくって……なんでだろうと思った。
「波夢の話相手になってくれ。あと、この屋敷は古くなったからかなりの手直しが必要だ。」
そう、元々この屋敷は亡き祖父が幼少の頃に建てた屋敷。
造りはしっかりとしてるけど、確かに最近修繕が目立つ。
だからって……
でも織田家当主の命は絶対。
「分かりました。」
姿勢をただし、兄を見据えて一つ返事をした。
安土城への登城は5日後。
必要最低限を持っていき、足りないものは兄が用意すると。
元々は私の存在はかなりの極秘扱い。
父が亡くなる5年前に妾の候補として来た母を大層気に入り、晩年後妻として迎え、出来た子ども。
後妻の存在はあまり公にされず、今は兄の力で私の存在は守られている。
ただ、今回の祝言では公になってなかった私の存在を公表する事も言われた。