第19章 ~淡き恋心とFaint memory~【徳川家康生誕祭】
(歌恋目線)
かっこよくて、優しくて、大きくて、年の離れた兄。
それは尾張のうつけと呼ばれるかの『織田信長』。
小さい頃、ほんの数年一緒に暮らしていた。
兄は私を大事にしてくれた。
身体が弱く、外に出る事が禁止だった私に外の事を沢山教えてくれた。
頭をぽんぽんと撫でてくれたり、出掛けた時にはお土産を持ってきてくれたり……、子ども乍に父よりも父のようで、鍛錬に励む姿はとてもかっこよくて、自慢の兄だった。
兄が織田家当主となった後は、数々の戦を勝ち進み、安土城を築城して益々自慢の兄だった。
そして、少し大人になった私はそんな兄にいつしか恋心を抱いていた。
でも、その初恋は呆気なく終わりを迎えた。
兄は500年後の未来から来たという波夢さんと夫婦になる。
波夢さんは同性の私からみても素敵な方。
暖かくて、皆を惹き付ける魅力があって、芯がとっても強くて……それでいて、兄の事を本当に心の底から愛していると言うのが分かる程。
兄も愛おしいという眼差しで彼女の事を見つめ、雰囲気もかなり優しくなったと思う。
兄のあんな穏やかな姿は見たことないほどだった……正直『完敗』という言葉がぴったり。
兄の祝言を期ににしばらく安土城で過ごすことに。
まさかここで一生で一度の大恋愛をするとは思いもしなかった……。
しかも、その相手が幼い頃にほんの数回言葉を交わしていたあの相手だったなんて……。