第16章 かぐや姫~家康Ver.
家康はこの物語を聞けば聞くほどに歌恋と重ね、なんとなく帝の思いが家康には自分の事のように思え、どんどんと物語の世界観、歌恋の読む雰囲気、全てに引き込まれていき・・・
『それから何日か経ち、ついにその満月の日になり、かぐや姫を守るために帝は兵を集め、かぐや姫は奥の部屋で身を潜めていました。』
『かぐや姫のことは私がこの命に変えても守ってみせる。だからそれが成すことが出来たら本当に私の気持ちを受け止めてくれ、かぐや姫・・・』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
満月の夜に照らし出された二人の姿。
月にまつわる物語を読んでいたからなのか・・・
まるでそれは月のいたずらか・・・それとも偶然か・・・
初秋の風は肌に当たるとヒンヤリとする程。
二人の目の前をイタズラする為にか音を立てて通りすぎていく。
「きゃっ!」
不意に吹いた強風に身を縮こませようと顔を俯かせ、持っていた絵本はパラパラとページが意思を持ったように捲られ、顔に当たるはずの風の冷たさは感じられず、気づくと温かさすらを感じ目を開けると・・・
『い・・・えや・・・す?』
家康が自分の懐に風に当たらないようにとっさに庇った。
『あっ・・・』
ふと手元をみると見ていたページとは全く違う場所が開かれた状態になり、読んでいた場所に戻そうと家康の所から離れようとするも、その腕はしっかりと歌恋の体を包み込んだまま。