第16章 かぐや姫~家康Ver.
(相変わらずの盛況振りだな…歌恋も生き生きしてる。)
城下の見回りの帰り道。
家康は愛しそうにその様子を見守っていた。
「あっ、家康!」
「お疲れ様。」
片付けを終え、目線を出入り口の方へやると、ちょうど会いたかったその人物が見え、笑顔で声を掛けた。
(可愛い。まるで尻尾をちぎれそうなくらいに振る子犬みたい。)
戸にもたれかかった体勢を起こし、近づいてくる愛しい恋人の姿をそんなことを思いながら優しく見つめていた。
「見回り終わったの?」
「うん。今はそこまでいざこざとかも無いからね。それ、持つよ。」
「大丈夫だよ!重くないし!」
風呂敷を鞄型に作り替えたものに数冊の冊子が入っていて、それを歌恋からすっと離し家康が持つことに。
「ダメ。歌恋すぐ蹣跚けるから。」
「大丈夫だって・・・!!」
「ほら、行くよ。」
素直に重たいからと言えれば良いのに言えずにひねくれた言い方しか出来ずにいた。
「あっ、待って!」
そのまま二人で御殿に帰ることになり、ようやく家康に追いつき、安土城下を仲良く手を繋いで歩いて帰った。