第14章 秀吉birthday*世話焼きは世話が焼ける?
「信長様、失礼します。」
天主の襖の前で主に声を掛け、中に入ると待っていたかのように脇息にもたれかかり、不敵な笑みを浮かべた信長の姿が目にはいってきた。
「来たか、秀吉。」
「信長様、単刀直入に話しますが、なぜ歌恋にお見合いをさせたのですか?」
「それほど気になるか。」
「っ・・・当たり前です。これでも歌恋のことを愛していますから。」
「相手は安土でもかなりの上の大名の息子だ。一度くらい恩を売っておくのも悪くはないだろう。」
「ですが・・・。」
「光秀と家康がついている。簡単に手出しは出来んだろう。そこまで心配ならばその席に行ってみるのだな。」
それはお見合いの席をぶち壊す事を意味し、格式の高い大名に恩を売るのはこれからのことを考えれば大事な事になる。
それを分かっている秀吉にはそこへ乗り込んでぶち壊すなんて出来ないに等しかった。
「まぁ、自分の目で確かめてくれば良い」
それだけ言うと信長は天主を後にし、1人残された秀吉は一世一代の決心をし、そのお見合いが行われている屋敷へと向かう事にした。
(例えその大名の所に行くことになったとしても、ちゃんと話をさせてくれ・・・。)
そんな事を思って自分の所へ向かっているとはつゆ知らずの歌恋。
豪華な着物をきて、粧し込まれ、その場にすわっていた。