第3章 短冊に込めた願い~秀吉編~
妾の話を聞いてからひとしきり泣くだけ泣いた。
(秀吉さんが帰って来たら少しでも心休めるように何か出来ないかな?)
そう考えるも中々思い浮かばず・・・
たえさんは「歌恋様は今のままでも充分素敵な方です。お綺麗ですし、お強い方です。ですからそのままでも大丈夫ですよ!」
たえさんは秀吉さんが信長様に仕え始めた時からの付き合い。だから秀吉さんのことは良く知っている。
だからたえさんにそう言ってもらえて安心した判明どうしよう…と悩んでいた。
「見た目だけでも変われば少しは秀吉さんも気づいてくれるかな?」
そう思い、うっすらと紅をさし、髪を結い上げ、秀吉の好きな香のする香袋をもち一気に女性らしさを増し出かけた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「後は…」
政宗とその日の夕方、七夕の日に出す料理の内容などを話をする約束をしていたため、政宗の御殿にむかった。
(もうすぐ七夕だし、短冊のお願い事はあれにしようかな…)
「七夕の日は新しい浴衣を着て、秀吉さんの好きなもの作れば少しは御殿に帰って来てくれるようになるかな?」
一瞬俯き涙がでそうになる。
「ダメダメ!妻がこんなんだったら秀吉さんに迷惑だよね!」
その頃、城下の視察を終え、城へと戻る途中の秀吉が遠くの方で歌恋の姿を見つけていた。
「あれは・・・っ!歌恋?」
うっすらと紅をさし、髪も結い上げていたため、一瞬気づかなかったが、着ていた小袖は間違いなく愛しい妻のものだった。
「何でこんな所に・・・?」
「こっちは政宗の御殿?」
いつもと違う雰囲気で何かを思いながら向かう姿を見て嫉妬という蕾がでてきた。
後を付けていくと、やはり政宗の御殿に入っていくのが見えた。