第3章 短冊に込めた願い~秀吉編~
政宗いわく、秀吉は部屋で領土の各地から届いた文や書類に目を通してると教えてくれた。
「政宗、今年も七夕よろしくね!」
「おう!任せとけ!今年もお前は手伝うんだろう?」
「もちろん!またご指導よろしくお願いしますね、師匠!」
他愛もない話をしながら秀吉の部屋の手前で政宗と別れて部屋の前に着くと・・・
――――
「ですが!秀吉様!祝言を挙げられて半年。奥方様は美しいお方で、私共にも優しくしてくださり、自慢の奥方様です。」
家臣の声らしき声が廊下からも聞こえる。
「このままの状況が続くのであれば安土城に妾の1人でも置き、お世継ぎを…」
「えっ?妾・・・?」
「分かっている。だが、俺は妾を・・・」
秀吉の声を遮るように家臣達が話を続ける。
「お言葉ですが、祝言を挙げるまでに一年近くかかり、ようやく夫婦となったのにこの半年、ほとんど御殿に戻られず…奥方様も身篭る気配もないとなれば・・・」
「それに、信長様がご隠居なさり、秀吉様が表舞台で動かれている今なら妾のひとりや二人、作っても可笑しく無いかと・・・」
「そんな…、秀吉さんに妾・・・?ってことは愛人?」
「奥方様ではやはり、秀吉様の政務をこなす支えには足りないのでは・・・」
それを聞いてしまった歌恋は手に持っていた文入れを手から離し、その場から逃げるように走り去っていった。
「俺は妾をとるつもりもない!、それに歌恋を否定するような事を今度言ったらお前達を俺は斬る。」
「そ、そんな…、」
「失礼致します!」
秀吉がものすごい剣幕で怒り出したので、家臣達は逃げるように部屋を出ていった。