第1章 さようなら、マフィア
真逆、織田作にばれているとは思わなかった。
「……もし、そうだったらどうする?」
「……どうもない。
組合の創設者がお前だろうと、今はマフィアにいるだろう?
組合と繋がっていたらマフィアは終わりだろうが……
でも、お前に限ってそんなことは無い。」
断言してくれた織田作の事を嬉しく思う。
「うん、確かに創設者ではあるけど……
創設だけして……マフィアに帰ってきたよ。」
「なんでそんなことをしたんだ?」
「……外国に行ったら凄い意気投合した人がいて……
マフィアに戻ろうとしたらその人達が……別れるのは嫌っていうから
一緒にいた証にって創設した。
あんまり乗り気じゃなかったけど。
でも、治を連れ去るくらいなら作らなきゃよかった。」
「創設するんだったら、自分で責任をもて。」
力強い織田作の言葉に驚いて……反省した。
「うん……分かった。
でも組合に戻る気は……無いよ?」
すると織田作は困ったように笑った。
「……懲りてないな?」
「……うふふ。
次からちゃんとするよ。」
「……云ったな?
ちゃんとしろよ?」
そういって頭を撫でてくれた織田作。
あれは……何時の話だっけ……?
まだ織田作が死んでしまう事を知らない平和な時だった。
「着きました。」
「…………。」
「首領。」
「…………。」
「……さん。」
「…………。」
「さんっ!」
「ん?どうした、安吾?」
「着きました。」
「どうしてそんな仏頂面なの?」
「僕が何回貴方の名前を呼んだと思ってるんです?」
「何回も呼んでた?
聞こえなかったよ?」
「それは貴方が何か考えていたからでしょう?」
「あぁー。確かに。」
「あと、着いたので好い加減車から下りてください。」
「おお!そういえばそうだね。」
何故全く脈略のない安吾と車に乗っていたかというと。
話は織田作が起きる前に戻る。
「……朝か」
目が覚めて直ぐに隣を見る。
「織田作……。」
織田作は何をしててもかっこいいよなぁ。
かわいいとも云えるな、これは。
寝顔を暫く眺めて一旦部屋に帰る。
手紙を書こうとは前から思っていたことだ。
書く言葉も決まっている。
『今までありがとう。』