第1章 さようなら、マフィア
なんだかんだいって織田作は優しい。
何を云ってもあまり嫌な顔をしないし、
何時も頼みを聞いてもらってくれている。
始めて会ったときだって、めっちゃ毒づいたのに、
仲良くしてくれた。
なんでこんな人がマフィアにいるんだろう。
ちょっとした好奇心で織田作の過去を調べた。
難しくなかったし、直ぐに結果は出た。
暗殺の仕事を受け持っていた、らしい。
あんなにのほほんとしていたのに、そんなことをするとは思わなかった。
後で本人に真偽を聞いたら、珍しく嫌な顔をされた。
珍しかったので、もう聞かない事にしたけれど。
でも絶対に人を殺さないらしい。
どうしてか気になっていたころ。
織田作にこないだは済まなかった、と謝られた。
今更そんなことを云われてとても驚いた。
別にいいよ、と返したら済まないとまた謝られてしまった。
「にしても、織田作って凄い強そうだよね。
ていうか強いよね。」
「そうか?
俺からすればお前の方が強いぞ?」
「なんで?」
「10で首領になった奴が云うか?」
織田作はそういって笑った。
「云うよ、それくらい。
でも見てみたいなぁ……織田作の本気。」
「なら、俺もお前の本気を見てみたい。」
驚いて織田作の方を見た。
「……こないだ組合が……治を連れ去って云ったでしょ?」
「……ああ。
お前と……確か中原幹部……だったか?が連れ戻しに行っただろう?」
「うん、その時ちょっと本気だした。」
今度は織田作が驚いてこっちを見た。
「そうなのか?」
「うん。お陰で更地にしちゃった。」
「……何をしたんだ。」
「異能力の一つである、《汚れちまつた悲しみに》を使った。」
「…………確かそれが幹部の異能力じゃなかったか?」
「そうだよ。
で、その異能のもう一段階上……っていうとおかしいけど、
《汚濁》っていうのがあって。」
「それを使ったのか?」
「そう、で更地にした。」
「聞きたいことが、あるんだが。」
織田作は少し悲しそうにして云った。
「何?」
マフィアを抜けたい、とかの頼みだったら凄い悲しいんだけれど。
「組合の創設者の一人がお前だと、聞いたことがある。
それは……本当なのか?」