第4章 お狐さんと
「あ、あの!離してください!」
「ほう、威勢のいい娘だな。神に逆らうか」
そう言ってさらにぐいと引き寄せられ、狐誉さんの端正な顔が視界いっぱいに広がる。そして顎に手をかけられキスをされそうになる。
「キミ!離したまえ!」
すると後ろから誉さんの声がしたかと思うと引きはがされ抱きしめられる。見上げると神社へ来たときと同じ格好の誉さんが狐誉さんをにらんでいた。良かった、本物の誉さんだ。
「…貴様まで呼んだつもりはない、招かれざる客よ。その娘は私の妻とする。こちらへ引き渡せ」
「お断りだね、たとえ神であろうといづみくんは誰にも渡さないよ」
「誉さん…」
男らしくきっぱりそう言い放ち強く抱きしめる誉さんにドキドキする。一方狐誉さんは眉間にしわを寄せた。
「ふん、忌々しい人間め。まあいいだろう、娘にどちらがいいか選ぶ権利を与えてやろう」
「え?」
「妻を満足させるのも夫の役割だ。つまり娘をより満足させた方が選ばれるというわけだ」
「………え?」
誉さんと狐誉さんはにらみ合いこちらは口を出せない空気だ。狐誉さんの不穏な言葉にものすごく嫌な予感しかしなかった。