第1章 出会い突然なんだぜハニー!
「いい、ネームだな」
の名前を心に刻みながら、ぐっと拳を握る。女の人とこんなに話せたことはあったろうかと噛み締める姿は、何処まで必死なんだこいつと誰でもツッコみたくなるだろう。
ちなみに余談ではあるが、カラ松には幼馴染みであるトト子がいる。見た目は申し分なく、スタイルも抜群の彼女だが、中身はダークチョコレートの中に七味をこれでもかというほど練りこんだような性格だ。
たった一言発しただけでも、カラ松はおろか他の5人の兄弟全員を下僕として従えられるであろう人物だ。
個性豊かな他の兄弟達全員を虜にする彼女はまさにアイドルだ。つまりそう、女性というよりもアイドル。しかもカラ松はトト子と一言話そうものなら、トト子のボディブローが必ず飛んでくる。命が幾つあっても足りないとはまさにこの事である。
何度もボディブローを入れられても立ち上がるカラ松という男は、不死身なのかもしれない。
「ん」
1音発してカラ松の手から煙草をそっと奪い取る。
その一連の行動に目をまんまるくしたり、顔をタコのように赤くしたりと百面相しながら固まる。
「...あぁちゃんと後で捨てるよ」
何かを勘違いしたようで、カラ松に語りかけるだったが本人はそんな事はとうに忘れている。
煙草を取った時に、手が2秒ほど触れてしまったのだ。たった2秒、されど2秒、カラ松にとって心の中は爆発寸前だ。
(あぁぁあぁ!いま、いま!て、手がふれ!...ふっ、カラ松ガール!なんて積極的なんだ!)
童貞を拗らせるとこういう事になるというのか、はたまた彼がピュアすぎるだけなのか謎は深まるばかりである。
「あー、カラ松、平気?」
ヒラヒラと空いた手でカラ松の視界を遮ってみるが、当の本人はキャパシティがオーバーしすぎているためにぼんやりと頬を赤く染めている。
そんな状況におかれ、困ったように眉を寄せていく。
この妙な光景を静かに波の音が包み、照りつける太陽は影を2つと暑さを作り続ける。