第1章 出会い突然なんだぜハニー!
サングラスを外しながら、下へと目を向ける。
カラ松の目線の先に揺れる長い髪。
少し大きめのロンティとぴったりとしたジーンズのラフな格好をした女が、煙草を吹かしている。
ふーっと女が煙を吐くと、白は青の空へと消えた。
「ねぇ、さっきからうるさいんだけど。ゆっくり煙草も吸えやしない」
カラ松の方を見ること無く淡々と女はそう言った。
「それはすまなかった、煙草は生命の休息でもあるからな」
格好をつけながら言ってはみるが、相手は女性。
無職童貞イタい彼にとっては、足がガクガクものだ。
言わんこっちゃない感じで、小刻みに震える足。
(おおおおっ!落ち着けカラ松!カラ松ガールがせっかく俺に話しかけてくれたんだ!ここはそう紳士的に!そうだ!紳士的にだ!)
彼はナルシストだ。
だがしかし...。
(い、今俺は汗くさくないだろうか?いやそれよりもまずカッコ良く見えているか?しまった鏡を持ってくるのを忘れてしまった!!)
とんでもないお馬鹿なピュアさんである。
「なにそれ、イタいわ」
冷たい言葉を吐きつつ、にやっと笑った女はそんなカラ松に臆することもなくふうっと煙草で浮き輪を作った。
「す、すまない!俺はまた人を傷つけてしまったのか!?なんて事だ!エリートシャットアウト!俺は俺自身の存在が人をしかも女性を傷つけてしまうなんて!」
頭を抱え始める。
他人からみたらただの不審者でしかない彼だが、本人はいたって真面目だ。
「いや、全く傷ついてなんかないし?なんの勘違いかしんないけど」
ふーっと吸い終わった煙草を女は当たり前の様に石段に落とし、踏みつけた。
立ち上がった女はとんだキチガイに出会ったとでもいいたげに、その場を去ろうとした。
だが
「カラ松ガール!それはいただけない!」
カラ松がいきなり大きな声で叫ぶものだから、思わず女は立ち止まった。