第1章 出会い突然なんだぜハニー!
石段に座りこんで、すうっとまた空気を吸い込む。
「ソルトだ。ふっ、ソルトの香りがするぜ」
海の香りと言いたいんだろうか、なんでもかんでもカタカナにすればいいと思ったら大間違いである。
ちょっとあれな所も彼の魅力の一つなんだろうが...。
ただそんな彼に一つ正解だと言えるものがあるとするなら、サングラスだろうか。
カラ松の目の前に広がる海は、太陽光に晒されてキラキラと光り輝いていた。
この日光の中サングラスをするのは不自然ではなく、むしろ効果的だ。
「さてと...」
背中に背負われていたギターが彼の腕の中へとおさまる。何年使っているのかわからないほどに傷のあるギターは、何度彼の歌声と共にあったのだろう。
コンコンとギターを叩き、リズムをとりながら彼は口ずさむ。
「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー...あっっっ!!」
歌い出そうとした直前、彼はある事に気づいた。
「No!!なんという事だ!弦が!ヒートしてキルしている!オーノー!」
何が言いたいかというと、弦が切れてしまいせっかくのギターが台無しだという事だ。
「なんたる神のイタズラ!お前無しで俺はどうやってこの美声を轟かせればいいというんだ!」
「いや、もう帰ればいいと思う」
ピシャリと冷たい言葉がカラ松の耳へ入ってくる。
「何を言う!俺はここで思いっきり歌うために来たんだ!今更帰るわけには...って?」
誰も居なかったはず、いや眼中に入ってなかったんだろう。カラ松が座っていた石段よりも下の段で、長い長い茶髪が潮風に揺れていた。