第1章 出会い突然なんだぜハニー!
「ふっ、海はいい!」
颯爽と海を見つめる男が1人。
眩しい太陽の下で、大きく手を広げる男は胸いっぱいに潮風を吸い込む。
海に来れば、1度はおもいっきり潮風を吸い込みたくなるだろう。それは変わったことではない、むしろ風を感じるというのは海に来ている醍醐味ともいえる。
だがしかし...。
この男は少しだけズレていた。
ズレている要因の一つとして、真夏だというのに黒い革ジャンが手放せないという事だ。
革ジャンの内側から出てくる熱気は、中をむしむしとさせ言うまでもなく汗を誘発する。
そしてその汗がまた革ジャン内をむしむしとさせる。悪循環だ。
まさにサウナとでも言える温度だろう。
しかし真夏といっても海の近くなので、少しは肌寒いかもしれない...。
いや、そんな訳は無い。
「ふっ、母なる海!人類の帰る場所つまり!このカラ松が帰る場所でもある!」
サングラスをかけてキメ顔をしてみるが、残念ながら見ている人間はいない。
いるとするなら、海の底にいる魚だろうか。
しかし魚類にキメ顔を向けてみても、意味は無い。魚が釣れるわけでもない。
もしそれで釣れるならば、漁師は全員キメ顔で漁をするだろう。なかなかシュールな絵である。
そもそも彼は今釣竿を有してはおらず、持ち歩いているものはギラギラと輝くサングラスと大きいギターだけだ。
別の竿ならあるが、それはまた別の機会にとっておくとしよう。話がややこしくなる。
そんな感じでキメ顔に深い意味は無い、むしろ意味を問いたいものだ。
「ふっ、またカラ松ガールズを虜にしてしまったぜ」
左手で額をおさえて、悩めるポーズをするが心配しなくともカラ松ガールズはいない。
彼の脳内には溢れているだろうが、現実にはいない。
「さぁ!今日も一曲歌おうじゃないか!このソルトウィンドウの吹き荒れる中で!」
語弊があった。
彼はどうやらかなりズレていて、イタいらしい。