第2章 オーマイリルおでん
「あづ!あづっっづううう!!」
「...ひひっ、ご愁傷様」
カラ松がおでんの熱さに悶絶するたびに、満足げにゲスすぎる笑顔を浮かべる。彼らのここ二十数年の間になにがあるというのか?
それは誰も知る所ではないが、言える事があるとするならば見方によっては美味しい、可哀想、そこまでせんでも、などなど数多あるだろう。
まとめると、カラ松はいつも理不尽であるという事。
だがそれも含めて松野カラ松なので、どうか彼の全てを愛してやって欲しい。
「あづぅ!んむんむ、美味いな、でもあづぃ!」
「熱いか熱いんだろ?その焼けるような舌先に冷たーいこいつが欲しいんだろ?」
ゴクリと唾を飲み込むカラ松に、一松は氷水の入ったコップをカランと揺らす。
「ほ、欲しい」
一松のゲス顔がさらに歪む、歪むったら歪む。
「欲しい?下さいだろぉ?」
「く、下さい」
この異様な光景を他の兄弟はもう見慣れたかのごとく、お酒を嗜む...のではなく。ここぞとばかりに十四松以外の全員が参加する。
なんの行事?
そういう行事である。
「下さい?俺らのようなクソみたいな奴隷にキンキンに冷えた清いせい水をおかけ下さい一松様、だろぉ?」
「「俺らのようなクソみたいな奴隷にキンキンに冷えた清いせい水をおかけ下さい一松様!」」
全員の頬は赤くなっているが、これは酒に酔っているだけでけして感じている訳では無い。大丈夫だ、問題ない。ノープロブレム、メイウェンティ...多分。
「一松様ぁぁ!」
「「一松様ぁあぁぁ!!!」」
「お口の中に下さい!」
「「お口の中に下さい!!」」
「あぁもう早くぶっかけて!」
「「あぁもう早くぶっかけてぇぇ!!」」
一松の歪んだ笑みは最高潮に輝く。
「しょーがねーなぁ!ほーらご褒美だあぁぁ!チビ太あぁぁ!!精水を5人分だぁぁぁ!!」
「いや、普通に水って言いやがれ!!歪んだ優しさをこっちにまでバトンパスしてくんじゃねぇ!てやんでぇ!」