第2章 オーマイリルおでん
「ともかく、同じ顔で女の人に声かけるなら変な事しないでね?カラ松兄さん?」
一松と十四松のほのぼのを壊すこと無く、的確に用件だけを抜き取りにっこりと微笑むトド松。
心が乾ききっているドライモンスターともっぱら言われがちな彼は、その名に恥じない程に心が乾ききっていた。
それと言うのもスタバァーでのとある1件から、兄達に女が絡めば必ず復讐してやると誓っているからだろう。要するにやきもちである。
どうか誤解しないでやって欲しいのだが、トド松という男の苦労を胸に刻んでやってほしい。彼は、いや彼らはただ童貞を卒業したいだけなのだ。
...思ったより最低な話だが。
「まぁさぁ、もう会う事とかないんじゃない?俺らニートじゃあるまいし、昼間とか平日だとか海でたそがれるとかないない」
ビールをぐいっと飲みながらまともな意見を言い始めるおそ松、カラになったコップを前に掲げおかわりーと元気よく叫び出す。
「飲みすぎじゃねぇか?おそ松バーロー!」
ハイブリッドおでんの亭主ことチビ太が、すかさずおそ松に水を差し出す。
「チービー太ー!水じゃなくて!大人のお水がおそ松くん飲みたいなー」
「バーロー、弟の恋バナも素直に聴けねぇ兄貴に出す酒なんてあるわけないだろコンチキショー!」
本当に松野ブラザーズの友達なのだろうかと疑りたくなるようないいように、んだよぉとスネ出す。
メンタルが小学生なまま育ってしまったゆえか、はたまた弟が遠い存在になってしまうのが嫌なのか、どちらにせよややこしい事だけは分かる。
「やめるんだ!ブラザーにマイベストフレンド!俺の、くっ!この俺の為にあらそ...あっっつううう!!!?!」
妙にフリを長くしながら喧嘩を止めようとしたカラ松、しかし言葉は途中で遮られてしまう。
熱々卵によって...。
「あー、手が滑った」
ニヤリとゲスい顔をしているのは、カラ松の事となると異常に執着をみせる一松である。