第5章 〖 繋いだ指先の行方 〗 人気投票2位記念 岩泉 一
及「い~わ~ちゃ~ん!」
玄関の外から及川の声がして、靴を履いて出ようとして、母ちゃんに止められた。
ー はじめ、誘拐事件があったんだから外に遊びに行くのやめなさい。徹君とウチで遊べばいいじゃない ー
「そんなん、隣町の事じゃんか」
ー いいから、お母さんの言うこと聞きなさい。徹君、危ないから今日はウチに上がって遊びなさい?オヤツもあるから ー
親って、勝手だ。
俺も及川も、昨日公園でチビ子と別れる時に・・・また明日な!って約束したのに。
まんまと母ちゃんに言いくるめられて、及川が玄関に入る。
及「岩ちゃん・・・どうする?」
「どうするって言っても、どうすんだよ。及川が考えろよ」
こういう時、子供って何も出来ない。
ワイドショーを見る母ちゃんの隣で、俺達もおやつを食べながら誘拐事件がどーのこーの言ってるテレビを見てた。
ー 本当に怖いわねぇ。小さな女の子ばかり2人も誘拐されて見つからないだなんて・・・1人で歩いてた子と、公園で1人で遊んでた子と2人。はじめ、アンタ達も気をつけなさいよ?知らない人から声かけられても相手しちゃダメよ? ー
・・・小さな女の子ばっかり?
及「い、岩ちゃん!つーちゃんいつも1人で待ってるよね?!」
「行くぞ及川!!」
もし。
もし誘拐犯がうろうろしてたら。
チビ子が危ない!!
ー はじめ!危ないから出かけちゃダメって言ってるでしょ! ー
バタバタと靴を履く俺達を追いかけて、母ちゃんが叫んだ。
「母ちゃん、俺達は大丈夫だ!誘拐されてんのは小さい女の子だろ!だから俺達は平気だよ!ちゃんと男の勲章ついてっから!」
ー バカ!そういう問題じゃないでしょ!待ちなさい!! ー
待てと言われて待つような俺らじゃねぇ。
帰ってから説教コースかもだけど、チビ子が誘拐なんかされたら、説教どころじゃねぇよ!
家を出てから俺と及川は足を止めることなく公園まで走り続けた。
横断歩道が点滅しても駆け抜け、曲がり角だって走る速さは遅くしたけど、駆け抜けた。
こういう時、なんで小さい子を連れてる人が・・・みんな誘拐犯に見えるんだろう。
繋がれた小さな手が、チビ子の小さい手とダブって見えて気持ちが焦る。
あと少し、あの角を曲がって真っ直ぐ行けば、いつもの3人の公園に着く!
及「岩ちゃん!あれ!!」