第37章 桜満開の心 ( 伊吹 梓 )
桜太に叱られたのもあるのか、ソファーに小さく体を丸めて座る紡ちゃんと、それに対して何事もなかったかのように座る慧太君を見比べて笑う桜太につられて私も笑ってしまう。
慧「なぁに1人で笑ってんだよ?」
桜「別に?これが我が家の日常なんだなってさ?」
慧「はぁ?」
桜「分からないなら、それでもいいんだよ」
慧太君にそう言って、そして・・・
桜「梓、これが我が家の日常だよ」
まるで姿が見えているかの様に桜太が私を真っ直ぐに見て微笑んだ。
一瞬が、とても・・・とても長く感じて、胸が震えた。
私はいつでも、あなたの心のそばにいるから。
だからもし、挫けそうになった時は・・・少しでいいから。
――――― 私を思い出して ―――――
溢れそうな涙を堪えるように空を見上げれば、ふわりと風が髪を遊ばせた。
神様?
もし、叶うなら・・・
もう少しだけ、あの人が生きるこの世界で同じ風を感じさせて下さい。
彼が、ひとりで泣かない夜になるまで。
もし、叶うなら・・・
私が新しい誰かに、生まれ変わるまで。
あと、少しだけでいいから。
微かな願いを風に乗せて、もう一度空を見上げる。
窓ガラスの向こうでは、まだ少し賑やかな声がしていて。
いつの日か、あの輪の中に入れる事を願って・・・静かに目を閉じた。
おやすみなさい、大好きな人・・・
また・・・いつか・・・
~ END ~